あやしいプレミアムフードの見分け方

キャットフードの謳い文句に要注意

 

昨今、“自称プレミアムフード”を目にする機会が多くなりました。

“自称”という言葉を入れたのは、プレミアムフードを標榜するのに、特定のルールを順守したり、特別な審査に合格したりする必要がないからです。メーカーが「プレミアムフードです!」と言えば、それはもうプレミアムフードなのです。

とは言っても、内容が普通のフードと遜色ないのにプレミアムフードを謳うのは、さすがにムリがありますよね。
だから多くのメーカーは原材料にこだわります。

「ヒューマングレード」
「無添加」
「○○産の○○を使用」
「グレインフリー」

プレミアムフードの広告やパッケージには、いかにも猫の健康に良さそうで、飼い主に安心感を与える文言が並びます。

そして飼い主さんは、この手の言葉に弱い!
一般的なフードでは目にしない「ヒューマングレード」「無添加」なんて言葉が使われていると、猫の健康に良さそうですからね。

©Shutterstock

かつて筆者は「プレミアムフードって、とりあえず猫の健康に良さそう」と思っていました。

でも、ペット栄養管理士・ペットフード販売士の資格を持ち、猫の栄養学に一定度の知識を有すると、自らプレミアムフードを謳うキャットフードに、冷ややかな目を向けるようになりました。

「この表示はいかがなものか……」と感じたり、キャットフードの研究にさほど力を入れていないのではないかと感じる自称プレミアムフードが散見されるからです。

こんな言葉を使うフードにご用心

筆者から見て、信頼できないキャットフードに使われている文言を紹介しましょう。

「人間も食べられる」
まるで普通のキャットフードは人間が食べられないというニュアンス! いやいや、普通のキャットフードだって人間が食べても問題ありませんよ。そもそも人間が食べて健康を損なうキャットフードは、猫も健康を損ないます。もちろん猫と人では必須栄養素やその量が異なるため、人が長期的にキャットフードを主食にしたら健康を損ないます。

「無添加」
総合栄養食のキャットフードは、猫に必要な栄養素を満たすためにビタミンやミネラルを“添加”します。ドライフードであれば、含まれている脂肪が酸化しないよう酸化防止剤も必要です。一部のメーカーはビタミンやミネラルを添加物扱いしていないようですが、栄養素を“添加”してますよね??? 厚生労働省だってビタミン類やミネラル類は「指定添加物」に指定しています。また、ペットフード協会もビタミンやミネラルを「栄養添加物」として定義しています。
それなのに「無添加」をアピールするのは、単純に無添加と記載したほうが健康に良いイメージだからです。きちんとしたメーカーは、誤解を招かないよう「着色料無添加」「香料無添加」など添加していない原材料を具体的に表記します。

「グレインフリー(穀物不使用)だから安心」
グレインフリーを否定するわけではありません。しかし、グレインフリーのキャットフードが猫の健康に良いという科学的根拠はありません。問題は「グレインフリー」の安全性を謳っていることです。よく目にするのが「食物アレルギー対策になる」という文言ですが、猫の食物アレルゲンでとくに多いのは「牛肉」と「魚」。じつは小麦やトウモロコシは、食物アレルゲンになりにくいのです。そういう意味では「ミートフリー」「フィッシュフリー」のほうが食物アレルギー対策としては有効と言えます。肉や魚ナシのフードなんてムリですけどね……。また「穀物は猫が消化しにくい……」といった文言も目にしますが、キャットフードに使われるトウモロコシや小麦、米などは水とともに加熱して糊化させており、その状態であれば猫も消化・吸収してエネルギー源にできます。

上述した文言が使われているからといって、そのキャットフードの品質が悪いとは言いません。
問題なのは、誤解を招くような言葉を使うメーカーの姿勢です。

キャットフードを選ぶ時は、「原材料」だけに着目しないようにしましょう。
次回、詳しくお話しますが、メーカーがキャットフードの研究・開発施設を持っているか、そのキャットフードの栄養バランスが愛猫に合っているかも大切……いや、むしろそちらのほうが重要なのです。

文/奥田直樹(ペット栄養管理士・ペットフード販売士)